選ばれる会社になるために、社長ができること
―「仕事とは、何のためにするのか?」という原点から考える―
「一生懸命働けば、家族も社員も幸せになれる」
多くの経営者がそう信じて走り続けてきたはずです。
しかし、ある日ふと立ち止まり、こう思う瞬間があります。
「親として、社長として、何か間違えていたのではないか?」
ある中小企業の社長は、従業員には、楽しく働いて、この会社を好きになってほしいと、いつも考えています。
そんな思いを持つキッカケになった、こんなエピソードがあります。
その社長には、2人の娘さんがいました。その2人の娘さんが小学生のころ、ブラスバンドに入って頑張っていました。夏休みもずっと、ずっと練習していました。でも、その社長は一度も娘の演奏を聴いたことがありません。

朝は娘が寝ている間に出ていくし、帰ってくるともう寝ています。学校の行事もほとんど出たことがありませんでした。
ある日、2人から「運動会で最後の演奏するから、見に来て」とお願いされました。
「土曜日か。ちょっと忙しいな」
その日、会社のみんなに話したら、「行ってきてください、どうぞ行ってあげてください」と背中を押されて、「じゃあ、ちょっとだけ」と抜け出し、娘の小学校に行きました。2人は、泣きながらトランペットを吹いていました。それを見て社長も、泣いてしまったそうです。
そして、「親として何かを間違えていた」と、その社長は思いました。
それまでは、仕事一辺倒でした。家族で東京ディズニーランドへ遊びに行っても、パレードの最中、ずっと仕事をしていて、パレードなんて見ていませんでした。ある時は、飛行機で一泊二日の旅行に行ったのに、空港のロビーで2時間も3時間も仕事をしていました。
でも、娘たちの演奏を見てから、何のために働いているのか?と、自分に問いかけました。自分、家族、お客さん、社員…それはそうだけど、「何より家族を守るためだろう。だったら、その家族を一番優先して考えよう」と考えを改めました。
従業員にも同じことを伝えました。家族の用事があったら、「忙しいから無理」ではなく、「どうしよう」とみんなに相談しなさい、急に、「今日お願いします」と言われても難しいけれど、事前に言ってくれれば何とかするから、と話しました。今ではみんな言ってきてくれるようになりました。
仕事とは、誰のためにするのか?
経営者にとって「仕事」は、自分の人生そのものであり、生活の糧であると同時に、社員の人生を背負う責任を負うものでもあります。
しかし、家族や社員の幸せを願っていたはずなのに、気づけば「数字」や「業績」ばかりを追いかけている。
「何のために働くのか?」という本質的な問いが、いつのまにか見失われているのです。
採用でも営業でも、「選ばれる会社」には共通点があります
採用でも営業でも、「選ばれる会社」には共通点があります。
それは、働く目的、経営者が大切にしていること、信条や理念を伝わる言葉で語れる会社だということではないでしょうか。
たとえば、
- 「従業員と接して生の声を聴き、人柄や考え方を理解するよう心がけています」
- 「うちは、従業員が家族を大切にできる働き方を重視しています」
- 「仕事を通じて、従業員が自分自身の人生も豊かになるための会社を目指しています」
そんなメッセージが、求職者や取引先の心に響き、選ばれる会社としての礎となっていくはずです。

経営者として何ができるのか?
1. 社員の人生に関心を持つこと
経営者の役割は「指示を出すこと」ではなく、社員が自分らしく働ける環境を整えることです。
仕事を通じて何を得たいのか、どんな人生を送りたいのか。
それに寄り添う姿勢が、信頼と共感を生みます。
2. 家族の視点を持つこと
経営者自身が「家族を大事にしているか」は、会社の文化に直結します。
家族と過ごす時間を軽視せず、社員にも「家族と過ごす時間」を保証できる制度を整えましょう。
3. 「働く目的」を言語化すること
社員にも取引先にも、「うちは何のためにこの仕事をしているのか?」を明確に語れる会社は強いです。
理念は、額に入れて壁に飾るものではなく、日々の意思決定の基準となるものです。
まとめ:働く意味を再定義することが、選ばれる会社への第一歩
「仕事とは、何のためにするのか?」
この問いに向き合うことが、結果として人を惹きつける企業文化を育てます。
売上も採用も、根本は“人”です。
社員も家族も、自分の人生を預けられる「目的ある会社」にこそ、未来があるのではないでしょうか。
